スターリング・ワールド

NatureTech Harmonyのブログへようこそ 2024年の東京でニートだったナカモトサトシは、2085年にタイムリープし地球防衛軍の総司令官となりました。広大な宇宙を舞台に、仲間たちと繰り広げるアドベンチャーストーリー。

第十一話 トリックスター・インフィニティ: 光を超えた航海

アンドロメダ銀河団統治者エレノアとそのチームは、宇宙の基本的な構造に深く関わるトーションフィールドの存在を発見し、それを利用することで、物質が光速を超えて移動する際の制約を克服する方法を開発しました。トーションフィールドは、空間と時間を非常に高い効率で歪めることが可能であり、この歪みを通じて、宇宙船は物理的な距離を「飛び越える」ことができます。

 

アルクビエレ・ドライブは、トーションフィールドを生成し、宇宙船周囲の空間を特定のパターンで歪めることで動作します。この歪みによって、宇宙船は局所的な空間泡(スペースバブル)内に位置し、その泡がトーションフィールドによって引き起こされる空間の流れに乗って移動します。この空間泡は、内部の物体にとっては外部の宇宙よりも時間が遅く進むため、船内の時間の進み方は通常と変わりませんが、外部から見ると光速の100億倍で移動しているように見えます。

 

トーションフィールドを操るためには、特定の周波数のエネルギー波、いわゆる「テスラ波」を用います。テスラ波は、トーションフィールドと密接に関連しており、これらの波を正確に制御することで、宇宙船は任意の場所へと瞬時に移動する能力を得ることができます。テスラ波は、オメガナイトという特殊な物質をエネルギー源として使用することで生成され、これにより、宇宙船は実質的に無限のエネルギーを得ることが可能となります。

 

この理論を基にした、宇宙船「トリックスター・インフィニティ」がこのほど完成し、本日試運転の日を迎えていました。

 

エレノアとイリオンは、アルクビエレ・ドライブを搭載した宇宙船「トリックスター・インフィニティ」のコックピットに座ります。科学チームが最終チェックを行い、すべてが準備完了となります。

 

イリオン:「エレノア様、オメガナイトを動力源とするアルクビエレ・ドライブの試運転を開始します。目的地は、ダークエネルギーが少なく、ワームホールでの到達が不可能な、遠く離れた星系「セレストハーバー」です。我々の住むヴェリディス星系・セレナディアから100万光年離れた惑星を選択しています。試運転が上手く行けば3日半で到着します。」

 

エレノア:「イリオン、アルクビエレ・ドライブのこの重要な瞬間に立ち会えることを光栄に思います。私たちの目指す未来への第一歩、それを共に踏み出しましょう。」

 

エレノアがそう言って微笑み、彼女の前にあるコンソールに手を伸ばします。そのコンソールには、宇宙船全体の動力と航行システムを制御する「航行起動コンソール」があります。

 

エレノア:「では、『トリックスター・インフィニティ』の新たな旅の始まりです。航行起動コンソール、アルクビエレ・ドライブを活性化して、セレストハーバーへのコースを設定してください。」

 

彼女がそう宣言すると同時に、彼女の指がコンソール上の起動ボタンに軽く触れます。突然、宇宙船の内部に穏やかな振動が伝わり、船内の照明が一瞬明るく輝いた後、静かに落ち着きます。

 

イリオン:アルクビエレ・ドライブの活性化が確認されました。エネルギー準備完了、航行コースはセレストハーバーへと設定されています。」

 

エレノア:「素晴らしい。私たちの探究心が、未知の世界へと私たちを導くでしょう。この旅が、宇宙の真理を私たちに教えてくれることを願っています。イリオン、出発しましょう。」

 

イリオンがコンソールに最終確認を行い、エレノアと共に未知の旅への出発を見守ります。エレノアの表情は、深い期待とわずかな緊張が混ざり合ったもので、彼女の目は遥か彼方、新たな発見を夢見る未来へと向けられていました。 

 

宇宙船「トリックスター・インフィニティ」がセレストハーバーに向けて加速すると、宇宙の景色は更に奇妙な光景へと変わります。光の粒子が時空を横切る速度で移動するため、エレノアとイリオンが見る宇宙は、一つ一つの星や銀河が長い光の帯に変わり、彼らの周囲を螺旋状に囲むように見えます。この光の帯は、色と輝きが絶えず変化し、宇宙の本質が可視化されたかのような美しさを放っています。

途中、エレノアは船の制御パネルに目を向け、微細な調整を施します。それは、この未知の領域を安全に航行するための必要な措置であり、彼女の冷静さと専門知識が際立っています。イリオンはその様子を見守り、彼女の能力に深い信頼を寄せています。

 

エレノアが制御パネルを慎重に調整していると、イリオンが近づいてきました。

 

イリオン:「それは何の調整ですか?」

 

エレノア:「セレストハーバーの環境に合わせた、船の防御システムの微調整よ。この星系は未知だから、予期せぬ宇宙気象や異常現象に備えておく必要があるわ。」

 

イリオン:「あなたのその冷静さと専門知識にはいつも感心させられます。この任務にあなたがいてくれて、本当に心強いです。」

 

エレノア:「ありがとう、イリオン。でも、これはチームワーク。あなたのサポートがあってこそ、私たちはここまで来れたのよ。」

 

イリオン:「それでも、あなたのようなリーダーがいることで、この任務の成功に向けて大きな自信を持てます。」

 

エレノアは一瞬微笑み、再びパネルに集中しました。

 

エレノア:「さて、準備は万全。セレストハーバーでの新たな発見に向けて、私たちの旅はこれからだわ。」

 

旅の最中、エレノアとイリオンは、宇宙船内外で時間の流れが異なるという感覚を体験しません。外部の世界が超光速で移動する一方で、宇宙船内の時間も同じペースで進んでいます。この現象は、彼らが超光速航行によって、宇宙船が特殊な「ワープバブル」の中を移動しているため、相対性理論に基づく時間の遅れが生じないことを示しています。

 

エレノアが船の速度表示を指差しながらイリオンに声をかけます。

 

エレノア:「見て、イリオン。速度計が光速の1億倍を示しているわ。船内の時計は、私たちが出発してから3日が経過している。外の世界も同じ3日が過ぎているはずよ。」

 

イリオンが考え込むように言います。

 

イリオン:「確かに、これは期待していた通りだ。アルクビエレ・ドライブのおかげで、宇宙船内外で時間の流れに差が生じない。これにより、私たちは宇宙の遠い地点への旅も、出発点での時間と同調して行えるんだ。」

 

エレノアはうなずき、アルクビエレ・ドライブによる超光速航行の新しい可能性について考えを巡らせます。

 

エレノア:「これで、遠い星系への旅も、私たちの生活に大きな変化をもたらさずに可能になるわ。私たちの技術が、宇宙の探索に新しい章を開いたのね。」

 

イリオン:「まさにその通り。これは、宇宙探索の歴史における画期的な瞬間。私たちは、宇宙のさまざまな秘密を解き明かす新たな道を切り開いている。」

 

エレノア:「もうすぐセレストハーバーに着くようね。デセラレーション・プロトコルを開始するわ。アルクビエレ・ドライブを微調整して、私たちの速度を段階的に減速させる。これにより、衝撃を最小限に抑えることができる。」

 

イリオン:「了解した。アルクビエレ・ドライブの調整は、このような速度からの減速において極めて重要だ。セレストハーバーの引力場を利用して、減速プロセスを支援する計画はどうだろう?」

 

エレノア:「その通りね。引力アシスト減速をプランに組み込んで、自然な減速を促す。この方法なら、船内の乗員に過度のストレスをかけずに済むわ。」

 

イリオン:「素晴らしい。それに、この方法はエネルギー効率も良く、私たちがセレストハーバーでの任務を開始する際、リソースを節約できる。」

 

エレノア:「全てが計画通りに進んでいる。もうすぐセレストハーバーの美しい星系を自分の目で見ることができるわ。」

 

宇宙船の周囲の光景が変化し始めると、それまでの一つに融合していた光の流れが徐々に分離し、個々の星々が明確に識別できるようになります。減速に伴い、後方の星系の光が拡大し、色彩が豊かになっていきます。

 

空間の歪みが解消されるにつれて、星々の位置が正確になり、無数の星が織り成す壮大なタペストリーが目の前に広がります。減速する宇宙船から見える景色は、宇宙の静寂と広がりを強調し、星間の距離の感覚を新たに感じさせます。星々の光が徐々に動きを取り戻し、宇宙船の窓から見える宇宙は、かつての高速移動時の一見統一された光の帯から、生き生きとした星々と銀河の複雑な構造へと変わります。

 

エレノア(心の声):「ああ、何ということか。この旅は、私たちが知る宇宙の全てが、光から成り立っているという真実を証明している。ここには、物質的な分離など存在しない。全ては光として一つに繋がっている。」